配偶者の不倫に頭を抱える女性・男性

1.不倫の慰謝料請求権の時効期間

不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は、原則として以下の2つの期間のうち、いずれか早い方で完成します(民法724条)。

  • 損害及び加害者を知った時から3年間
  • 不法行為の時から20年間

特に注意が必要なのは、3年間の短期時効です。

「損害及び加害者を知った時」:配偶者(債権者)が、配偶者と不倫相手(加害者)の両方を知った時点を指します。この時点から3年が経過すると時効が完成します。

時効の進行を猶予するための協議の写真

2.時効の進行を妨げる(完成猶予する)内容証明の活用

もし、時効(3年)が迫っているにもかかわらず、まだ慰謝料の金額や支払いについて合意できていない場合、内容証明による催告が非常に有効です。

内容証明は、不倫相手(加害者)宛に送付します。

ⅰ不法行為の特定(クリックで詳細表示)
  • いつ頃から、いつ頃まで不貞行為があったか。
  • 誰と誰の間で不貞行為があったか(配偶者と相手の名前)。
ⅱ損害の発生
  • 不貞行為により婚姻関係が破壊され、多大な精神的苦痛(損害) を被ったこと。
ⅲ慰謝料の請求
  • その損害に対する慰謝料として、具体的な金額(例:300万円) の支払いを求めること。
  •  支払期限を設定すること。
ⅳ時効完成猶予の意思表示
  • この請求が時効の完成猶予のための催告であることを明確に記載すること。
子どものためにも不倫相手に慰謝料をしっかり支払ってもらいたい。

3.注意点:慰謝料の支払いと時効の更新

内容証明を送付した後に、不倫相手が慰謝料の一部または全部を支払ったり、「債務を承認する」旨の書面(例:示談書、誓約書など)を作成・交付したりした場合、これは時効の更新(リセット) にあたります。

  • 債務の承認があった場合、それまでに進行していた時効期間はリセットされ、その時点から新たに時効が進行し始めます。

内容証明を送付した後の交渉において、相手から慰謝料の支払い意思や債務の承認を明確に取り付けることができれば、時効の問題は「中断」または「リセット」され、以後の請求が可能になります。